勝利投手:和泉

HR:ZERO

今回はご要望の通り、小説風に仕上げさせて頂きました。

「ツナウェイの森」

僕はいつもと変わらない朝のルーティンを終えようとする頃だった。

久々に立つグラウンドには秋の匂いと少し湿った風が吹いている。

「やれやれ。時間だ。」

太っちょの豪速球で始まる朝の試合に目が覚める。

太っちょと言っても和泉はむしろ可愛らしい雰囲気さえ醸し出している。

甲子園球児の面影もなく今は半導体を売っている。しかし、太っちょは試合になるとその栄光を取り戻す。

「君達はよく分からないな」

マカオからの刺客こと立石の快音が初回から響く。

彼の華麗なバッティングはまるでフランツ•カフカの小説の世界を描いているようだ。

「いいかい？」

「決まって異変が起こるのはこの時間だ。君ももう分かっているだろう？」

妙に心地の良いこの違和感は試合の経過と共に強まっていた。

昨日のウイスキーのせいなのか、あるいは僕と同じように君も感じているのか。

「僕はこの感覚を知っている、きっとここに来た事がある。」

それも3週間前だ。

「そうだ、あの時は助っ人の活躍で勝ったんだ。」

ショート杉ちゃんはたまたまここに運び込まれたのではない。

彼はいるべくしてここにいるのだ。

「そうだ。僕が真っ先に声を掛けた子じゃないか。」

心地良い違和感が上手すぎるショートと気付いたのは試合も後半に差し掛かる頃だった。

こんな大事な試合の時なのに、

「あぁ人間は忘却の生き物だ」なんて冷静に思ってしまう僕がいるし、カフスボタンの外れたワイシャツがどことなくお似合いだった君の言葉も思い出す。

「僕らはとても不完全な存在だし、何から何までうまくやることなんて不可能だ。不得意な人には不得意な人のスタイルがあるべきなのだ。」

気づけば僕は惜しげもなく助っ人を一番から三番まで並べていたんだ。

まるでそれは一ミリのズレも無いピアノの旋律のようにね。

「そうか、今回もやっちまったね」

「大丈夫。僕たちはね、忘れることができる」

「世界というのはね、ひとつの記憶とその反対側の記憶との果てしない闘いなんだよ」

僕は、これは人生で考えたらほんの一瞬の出来事なんだ。という合理的な考えに辿り着いている事にある意味恐怖を覚えた。

「やれやれ。また来週か。」

プライドと忘却の日々がひしめき合うカオスの中、僕たちオリジナルツナメンはいまだに真っ白なユニフォームを着たまま飲茶という迷宮へ迷い込んでいく。

次号、

「ラビリンスのその先へ」に続く。

以上。村上春樹風フワッとした試合報告になります。

こんなツナーズに付き合って頂いたドリさん。

感謝です。

ありがとうございました！！

PPW用

今回ツナーズは思い知りました。

「守備って大事だな」と。コンポードー杉本さん、広瀬さん。サクラの水口さん。もはや常連の美濃部さん。そして香港人Zero、Joe。僕たちはあなた達が居ると強い気がします。ドリさんありがとうございました！